死ぬ時に最高の人生だったって思えたら素晴らしいことじゃない?

毎日瞬間瞬間楽しく生きたいね。赤ちゃんのように純粋にやりたいことやりきって。死ぬ時に自分よくやった!生まれてきてよかった!と思えたら最高ですよね。

2020年72冊目 すばらしい新世界@オルダス・ハックスリー 200523

 

すばらしい新世界 (光文社古典新訳文庫)
 

 ●インプットしたい事

完璧なまでに統制された世界、ディストピアがどのように描かれているのか、興味がある

●所感

現代では当たり前とされることが本書のディストピアでは当たり前ではない。人間らしさを司る感情や思考能力は奪われ、一方でみな安全で安心でありソーマという薬に頼ることで宗教や酒に依存することなく悲観的な感情を引きずることなく楽観的に生きていける。さらに、階級ももちろん存在するのだが、人工的に生まれ育てられた人類は幼少期に自分の置かれた階級にそった刷り込み教育をされる。その刷り込み教育のおかげで人類は階級差があるとはいえ、他の階級の事をうらやましく思わず、幸せに生きていけるのだ。家族や親という概念もなく、それらが人類に悪影響を与える非合理な存在であると描かれている。人類は年をとるものの老いることはなく60歳になっても若いころと変わらずに元気溌剌で行動できるのだ。
 
 
そんな文明化が進んだディストピアの対照的な存在として描かれるのが野蛮人居住地だ。野蛮人居住地の存在を描くことで、美しいだけが人生じゃない、苦しいことや醜いこと、ネガティブな感情があってこそ人生なのだ、と訴えかけているように感じる。
 
人類は一つの地球に生きているが、この小説の様にそれぞれに固有の世界が広がっているのだ。日本はきれいで安心安全で文明化された社会だ、しかし輝きを失ってしまった目をしている人も多い。一方で、アフリカに行くと雑多で様々なものが入り混じってカオスな世界が広がってはいるが、人々の眼は輝いているようにも見える。
 
綺麗で、安心安全で、困ることもなく常に幸福で、人間関係で疲れることもなくて、というような完璧な世界は人間らしさがなくつまらない世界なのかもしれないと本書を読んで感じた。完璧じゃないからこそ人生は面白いのかもしれない。
 
(執筆時間:20分)